2007年03月17日

大人の移し方

(注)友人である薫ちん→私→薫ちんのリレー形式になっています。
そのため、最初と最後は友人の文章であることをここに明記します。
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■大人の、移し方……<速水氏風に読んでね(ちゃらら〜ん♪ 昼メロ?)

「げほ…ごほ…っ!はぁ……はぁ……ぁ……っ」
仰木高耶が今流行りの風邪をひいて3日となった。
ここ最近、邪眼がもとで体力が落ちていた高耶。
ただの風邪と侮っていたのが災いして、結果39度の熱を出して寝こんでしまった。
「ひどい……熱ですき、こんままでは……」
看護に携わっていた中川がポツリと呟いた。
その背後には寝ずの番で直江がじっと高耶を見守り看護を続けていた。
側近の兵頭は高耶の変わりに四万十軍団長代理として隊員達に指揮を送っている。
仕事が終わると必ず高耶の様子を伺いに来た。どんなに仕事で遅くなっても、高耶の様子を見に来るもので、直江が無理矢理付きっきりで看病すると言い出した。
彼なりの嫉妬心をそれで紛らわしているらしい。
――今のこの人には体力の低下が一番の命取りなのに……。
二晩も寝ていない直江の形相は険しかった。
髪は乱れ眉間にシワを寄せ、着ていたワイシャツも胸元ではだけ、心底疲れきっている様子だった。
高耶は夜中に何度か激しい嘔吐を繰り返す。
全てが毒に犯され、そのモノの処理は全て直江が始末していた。
とはいえ、なにも食していない高耶が吐き出すのものは、酸性の液体のみに近い。
まさに毒を吐きちらしているようだった。それがまた痛く哀れでならなかった。
「……そろそろ、薬の時間だ。中川、持ってきてくれないか」
高耶の苦痛の吐息以外、コチコチと室内時計が音を立てている。
それを見上げた直江が視線だけ移すとカルテを手にしていた中川に告げた。
無言で頷いた中川。高耶の病状が思わしくない。薬を変えてみるか――と、ボールペンをカチッとしまうと白衣に収め静かに高耶の部屋を出て行った。
「もうすぐ、楽になりますよ……」
直江は汗に濡れた高耶の前髪をすいてやる。ひどい、汗だ。
濡れたタオルを替えてやろうと手を伸ばしたときだ。
高耶の喉がヒュ…と音を立て唇が開いた。
「な……っ……ぇ……」
潤んだ瞳をうっすらと開けて熱で熱い手を直江の手のひらに乗せてきた。
「高耶さん……」
高耶の手に己のもう片方の手を重ね、直江がそう呼びかけたのも束の間、高耶は直江と1度だけ視線を合わせると、またふっと、意識を遠のかせた。
その唇は、微かに微笑んで――。
「っ!……高耶さんっ……」
急に直江は怖くなった。いつもはその微笑に救われるはずだった。その彼の微笑だ。
なのになぜ……こんなにも不安がよぎるのか。胸が、締め付けられる想いだ。
直江は乱れた前髪をぐしゃっと掻き揚げるとぐっと瞳を閉じた。
(いや、そうじゃない。この人を生かせるのは、この俺だけだ……)
そう自分に言い聞かせる。
「この、俺だけだ…………」
そう呟いて、直江は高耶の呼吸の妨げにならないよう、唇を重ねた。
重ねたまま「愛している」と声を出さずに唇だけを動かした。いとおしむように。
――愛を吹き込むかのように。
ちゃらら〜ん、ちゃらら〜ん、ちゃーらーらー♪

その後、高耶は完治し任務遂行で赤鯨衆アジトを離れることとなった。
変わりに、直江は手ひどい風邪をひいた。
一端の隊員の直江に高耶の看護がつくわけもなく、ただひとりで病状の床につくハメとなった。
しかし、この風邪の菌は誰にも渡さない!と本人は粋がっていた。
高耶の配慮で看護に中川をつけると言った意見にもたてついたほどだ。
後日、これが愛の証なのだと、直江は兵頭に得意げに語ることとなる。
ちゃんちゃん!

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(下の点線まで私が書いてます)

「げほっ! ごほっ……げぇほっ……ごぉほっごぼっ」
何とも情けない咳をしてるのは、直江信綱その人である。
高耶の風邪を移された直江は、中川の看病も断り、隔離された部屋でひとり寝込んでいた。
だがそうはいっても、誰にも世話をしてもらえないのは正直辛い。
(しかし、あなた(が移してくれた菌)が俺の中にいるんだ。俺の中だけに……!)
苦しみの中でも幸福に浸る、直江信綱四百ウン年目の冬だった(笑)

「中川」
高耶が廊下で中川を呼び止めると、大仰に溜息をついてみせた。
そして首を振る。
「駄目ですきに。あんひとは、私が何を言っても部屋に入れてくれちょりません」
そうか……と呟く高耶を、中川はじっと見上げた。
「なんだ?」
「仰木さんが直接行った方がええじゃないがですか」
「オレは忙しい。そんな暇はない」
と、にべもなく言うくせに、実は気に掛けているのが中川にはバレバレだ。
(仰木さんも、素直じゃないですき――)
中川は再び溜息をつく。
ここにもまたひとり、直高に挟まれて苦労する人間がいるのだった(チーン)

高耶は結局、直江がいる部屋の前に立っていた。
気付いたら足がこちらに向かっていたのだ。
(オレのせいだし、様子くらいは見てやらないと)
そう自分に言い訳し、中から掛けられた鍵を<力>で外してドアを開けた。
「なおえ……?」
そっと中に入ると、苦しそうな喘鳴が聞こえた。
慌ててベッドに駆け寄ると、額に玉の汗を浮かべた直江が眉根を寄せ、時折呻いている。
かなり苦しそうだ。
「直江……!」
額に手をやると、焼けるように熱い。かなりの高熱だ。
薬は飲んだのか?
部屋の中を見渡すと、あった。ドアの下の隙間から、中川がせめてものと差し入れたらしいが、一切手がついていない。
この馬鹿、と言いかけて、高耶は言葉を飲んだ。
薬に気付けない、もしくは気付いても起き上がって飲めない程に辛いのだ。
どうするか思案して、コップに水を入れて戻ってきた。
「直江。今、楽にしてやるからな」
中川お手製の錠剤と水を口に含むと、直江の鼻を摘み口を開かせ、唇を寄せていった。
「ん……」
ただ薬を飲ませているだけなのに、思わず高耶から声が漏れる。
直江の喉が嚥下したのを見届けても、唇は離さなかった。
いつもより熱い口唇。
「なおえ……」
――早くオレのそばまできてくれ。
その想いを伝えるように唇を重ねる。
――オレはずっと、おまえがのし上がってくるのを待っている。
「ん、ン……ッ」
直江が眠っているからか、高耶はいつも以上に本能のまま貪り、もう少しで馬乗りになる所だった(爆)

「た、かやさん……?」
「っ! 直江、気付いたのか!」
意識が戻った直江は、我に返って身を離した高耶を知ってか知らずか、赤く火照る頬に手を添えた。
「来てくれたんですね……こんな男のために……」
「何を言ってる。おまえに風邪を移したのはオレだろう。どうして中川の看病を断った」
熱で虚ろ気味だった直江の視線が、急に真剣味を帯びた。
「あなたを誰にも渡したくなかったからです」
「直江」
「あなたの菌を、誰にも触れさせたくなかった。この苦しみでさえ、あなたのものだと思うと愛おしくすらある。あなたのものは誰にも渡さない。体液も、精液も、髄液も、――ウイルスさえも。私は、本気ですよ」
「……バカ……」
「あなたの菌に犯されて快楽すら感じる。俺は今、あなたを内包してるんです。まだ足りない? 本当はもっと欲しいでしょう? あなたへの証なら、いくらでもあげる。不安なら、永劫に証明し続ける」
直江の本気はマズイ。このままでは恍惚に飲み込まれると、高耶は傍を離れようとした。
「……もういい。とにかく寝ろ。早く風邪を治して……、つっ」
手首をすごい力で掴まれて、しまったと思った時にはもう遅い。
「な……っに、すんだ」
少々焦って顔を見ると、先ほどとはうって変わって、直江は意地の悪そうな笑みを浮かべていた。
何だか悪い予感がする。その的中率は恐ろしく高いのだ。
「さっき、キスしましたね。あなたの唾液の味がする」
あまりの鋭さに、高耶はカッと顔を赤らめた。
「オ、オレは薬を飲ませただけだ! ヘンなこと言うんじゃねえ」
「薬を飲ませただけじゃ、こんな風になりませんよ」
赤く熟れた高耶の唇を指でなぞり、高耶が身を震わせるのを楽しそうに見遣る。
本人は気付いてないだろうが、こんな潤んだ瞳で見つめられたら堪らない。
無意識の媚態の前に、直江の理性はもろくも崩れ去った。
「――ッ!! ンンッ……」
体ごと引き寄せ、思う様口腔を蹂躙する。
高耶のしっとりと濡れた舌に陶酔する。
しかしこれ以上はマズイ。直江は風邪を引いている身だ。
必死に情欲を堪えて、やっとのことで身を離した。
「もう、行った方がいい。このままここにいたら、あなたに風邪を移してしまう」
「……移しても、いい」
「高耶さん……」
あさっての方向を向いて、短く告げられた言葉。
(まいったな……)
高耶はいつもこうして、留めようとする理性を簡単に超えさせてしまう。
自分がどれほどの殺し文句を言っているか、わかっているのだろうか?
直江はしばし逡巡したが、抗うことを放棄した。
口元をフ……っと緩めると、高耶を再度自分の胸に引き寄せる。

「大人の移し方、教えてあげる――」

ふたりの体は、ベッドの上に折り重なっていった。

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■もうひとつのカミングアウト編

――ゆうべあの男と何を話していたんですか。

シャワーを浴びて出た高耶にタオルを差し出しながら兵頭は言う。
「おまえに話す必要のないことだ」
タオルを受け取り髪を乾かしながら高耶は答えた。
「橘の寝巻きから隊長の匂いがしちょりました。あれはどういうことですか」
ぎくり、と高耶が動いた。鋭い視線を兵頭は外さない。しばらく動かなかった高耶。
目線を外したまま、
「あんな体調なのに戦闘に出ると聞かないから押さえつけた。それだけだ」
そう答えた。が、次の瞬間。ハックシュ!!と高耶、くしゃみが出た。
引き続き何度か繰り返し、大丈夫ですか?と兵頭が声をかけた。
兵頭がタオルを剥ぎ取ると、高耶の顔が赤らんでいる。
失礼、と声をかけ兵頭が高耶の額に手を当てる。――熱い……。
「隊長、熱がありますき」
今中川を……と、呼びに行こうとしたのと同時に部屋にノックの音が響いた。
その当人、夜の診察の為に訪れた中川だった。
兵頭は軽く事情を話すと中川が体温計を取り出し、その間、高耶の脈を計る。
ピピッと鳴った体温計が示す数値は通常の高耶の平熱より遥かに高い。
「……また、風邪をひきましたね」
そう重く口を開く中川。部屋が静まり返る。
しばらく、時が過ぎ、ノックの音でその静寂が乱された。
「橘です。入ります」
と直江が言うや否や部屋に入りこむ。高耶との逢瀬の後、ひと眠りしたら熱が下がったらしい。その報告と多少の「甘い夢」を見ながら来た直江だったが、その部屋の空気を感じ取ると高耶の顔が赤く辛そうにしているのが目に入る。
何も言わず見詰め合う二人。直江の表情はどこか苦しげだ。そして無言のままキツク高耶を抱きしめた。
驚いたのは中川と兵頭だ。
でも高耶は眉ひとつ動かさず驚きもしなかった。
「あなたと……いう人は……」
高耶はもがかない。切迫した口調で直江が耳元で囁く。
「風邪を……ひいたんですね」
直江……と小さく囁き頷く高耶。

兵頭は唐突に直江の寝巻きについた「高耶の匂い」の意味がわかった。
(このふたりは……っ)
青ざめて急に背を向けるようにして部屋を出て行った。
そんな状況で中川にももう半分以上、直江と高耶のしたことがわかってしまった。

(仰木さん……あなたはこの人の為に……)

高耶の治療をしたくても無言で抱き合ったままいい加減離れないふたりと、何やら青い顔で出て行ってしまった兵頭……。
またもや困惑の被害者は中川掃部その人であった。

ちゃんちゃん!なんとなく書きたかったのさぁ。

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1998 初出
1999/02/14 再掲
2007/03/17 改稿

あえて「薫ちん」と当時のまま呼びますが、この大切な友人は1998年の暮れに永眠しました。
初出は彼女のサイトのBBSで、彼女が書いたものに私が続きを書き、さらに彼女が付け足し3部作の形になりました。
翌99年に有志の手で彼女の追悼本「CONFINE」が発行され、そちらに再掲しました。が、私の文章が途中で切れてるので、これが完全な作品になります。
追悼本の作品は他にあるので、その掲載時にでも彼女への想いは綴りたいと思います。

こういうパロディ、個人的に大好きです黒ハート
posted by akiya at 13:37| ミラ小説アーカイブス | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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